特別企画、橋本洋二プロデューサーロングインタビュー

 第二期ウルトラシリーズを語る際、プロデューサー橋本洋二氏について語らない訳には行かないだろう。とはいっても橋本氏は、この時期の TBS系の7時台のテレビ映画をプロデュースを多数行っており、ウルトラシリーズは、氏の数多くの代表作の一部に過ぎない。氏の製作する作品は、テレビ映画でありながら、脚本の打ち合わせに監督を交え、脚本家とプロデューサーの3者で脚本を作るという、劇場映画的な、良心的な作り方をすることで知られる。

 通常、テレビ映画は、脚本家とプロデューサーの2者によって脚本作りが行われて、監督は、ただそれを画にするだけという縦割り的な製作方針がとられる。そして監督は、下手に脚本に意見したりすると番組を降ろされてしまうというのが普通だそうである。なので監督を脚本つくりに参加させる橋本氏の製作方針はテレビ界においては非常にめずらしい。氏の担当作品はこういった方針により、製作スタッフから大変好評を得ていたという。
 また、このページの作品研究1や2で触れているように、橋本氏は脚本にテーマを設けることを製作方針としていた。これにより、作品は高い作家性を有し、氏の担当作品は、いづれも奥の深い作品に仕上がっている。

 橋本氏のウルトラシリーズ以外の代表作は、『コメットさん(九重佑三子主演)』『怪奇大作戦』『柔道一直線』『刑事くん』『刑事犬カール』『コメットさん(大場久美子主演)』など多数あり、ウルトラシリーズは『ウルトラセブン』の2クールめから参加。テレビ作品担当前はTBSラジオでラジオドラマや教育関係のドキュメンタリーの製作に携わり、ドキュメンタリー『伸びゆく子どもたち』で当時「新教育」といわれた戦後民主主義教育の草分けの実践者である阿部進、無着成恭といった教育者たちをいち早くとりあげて話題となった。以降、氏は初代『ウルトラマン』を視聴し、興味を持ったことからTBSテレビへ移り、『コメットさん(九重佑三子主演)』を手始めにTBS系の7時台のテレビ映画で辣腕をふるっていく。

 また、橋本氏は、若手スタッフの育成にも力を注ぎ、経験の浅い若手脚本家に、ハコ書きのやり方から教えたという。水準に達しないシナリオには、何度も書き直しを要求し、その書き直し作業に、深夜まで立ち会うことも多かった。現在のようにシナリオライター養成学校が林立していない当時の状況では、きちんとしたシナリオライターの養成機関がないため経験主義が横行しており、本来すぐれた資質を秘めながら芽が出ないで終わってしまうライターも少なく無かっただろう。そんな状況のなか、橋本氏は、若手の脚本家から、内に秘めた作家性を引き出すというリスクの伴う作業まで行ったのだ。これは言い換えればシナリオライター養成所に通いながら脚本家としてギャラが貰える、という割のいい話で、すでにある程度でき上がった人材しか相手にしない昨今のテレビ界では考えられない。ただし、氏のチェックはかなり厳しかったそうだが…。

 そんな橋本氏を慕う脚本家は多く、日本シナリオ作家協会理事で脚本家の石堂淑朗氏に「頭のきれる人」と言わせしめる程の人望を得ている。また、東映の名プロデューサー平山亨氏も、橋本氏を高く評価する。しかし、無名時代から橋本氏が育てた市川森一氏とは、確執めいたものが生じてしまったのは残念ではある。

 さて、ここに掲載するインタビューは、1998年2月に東放製作にて、私の友人ビッキーHONMA氏が橋本氏にインタビューを敢行した際、録音した音声テープより採録したものである。
 このインタビューは、以前友人のY,M氏が作った同人誌『橋本洋二大全集』(同人誌でありながら、某ケーブルTV局が資料として所蔵しているという)において収録されたインタビューと同一の音声テープより新たに起こしたものである。だが、元のインタビューは非常に長いものなので、第二期ウルトラ以外の作品に触れている部分(ブラザーアワー作品や、『怪奇大作戦』など)や内容が重複している発言は割愛して再構成してあります。


1,橋本氏、ウルトラマンタロウ、ウルトラマンレオを語る

橋本 (ウルトラシリーズに関わったのは)タロウまでだったと思ったな、タロウの途中で部長(TBS映画部部長)になっちゃったのかな、僕は。だからレオは、他の人がやってるはずなんだよね。

――あっ、そうなんですか。田口成光さんがメインライターですけど。

橋本 メインってゆうか…タロウの一番最初書いたの田口だった?

――そうです。でも一番本数書いてるのが阿井文瓶さんなんですけど。阿井文瓶さん、後半ほとんど一人でかいてて、もう橋本さんに何度も直しを要求されて。(タロウが)デビュー作ということですね。それ以降、阿井文瓶さんがずっとブラザーの枠(ブラザーアワー)を『コメットさん(新)』までメインでやっていくことになりますね。

橋本 『コメットさん(新)』ってゆうのも、僕は頭のとこ(番組開始当初)の設定だけで、あとはもう山本(典助)さんっていう人に任せて…いや、部長だったから、直接番組ひとつひとつやってく訳には行かないんで。

――脚本についてはチェックは厳しかったそうですよね。

橋本 あまり厳しいとかなんとかっていわれても(笑)アレだけど。レオはもう関わってないんだ僕はね。みんながホン(脚本)もってくるからもってきたときに、読んだときの感想ぐらいは言いましたけれど。あんまり関わっているとか、そういうアレじゃなかったんですけどね。

――でも、タロウは、ちゃんとしっかりやりましたよね。

橋本 そうだね、タロウはまあ。タロウの終わりの方で部長になっちゃったんだっけかな。人に任せたのに、あんまり口だすのも可笑しいからねえ。

――熊谷健さんが円谷プロ側のプロデューサーですよね。でも、橋本さんが、やっぱり脚本のチェックはやってたということで、阿井文瓶さんは大分しごかれたと言ってますけどね。

橋本 タロウの最後までは、いろいろ話はしたりした印象はありますけれどもね。

――僕はこの、ウルトラマンタロウは一番好きなんですけど、やっぱりエンターテイメントに徹して明るいという。

橋本 桜田淳子の歌出したりして色んなことしてね。そういう路線を引こうと思って、まあ衣装(ZATの隊員服)をああいう風にしたし、篠ちゃん(篠田三郎氏)みたいに、あんまり暗く無いタレントさんでやろうとおもってね。ああいう風にしたんですけど。

――あさかまゆみさんが当初ヒロイン(白鳥さおり役)でしたが、小野恵子さんに変わりましたけどね。

橋本 そうなんだよ、途中でやれなくなっちゃってね。

――やっぱり、スケジュールですか。

橋本 う〜ん。まあ色んなことがあったんじゃないですかね。僕はあんまり現場のことには干渉しなかったからアレだけど。まあ、ちょっとやりきれないっていうから。まあ、それじゃあ、小野恵子っていうのが、気立てのいい人でしたから。そういう後に入るの中々ね、いやがるもんですよね、みんなね。だから彼女ならいいっていうことで、推薦したんですけど。

――最初、山際永三さんが撮っていて、佐々木守さんも2本書いてますけど。

橋本 ああそうだ、真船(禎)のやったやつね。

――あれはなんか、スポンサーがオモチャを出してくれってことで書いた本で自分としては全然気に入っていない作品だって佐々木さん言ってたんですけど。

橋本 それはだから熊ちゃん(熊谷健)が頼んだことじゃなかったかな…そうかい? そういえば真船のやったやつ2本彼書いたんだ。そうだね真船ちゃんやったから。

――田口さんと阿井さんほとんどメインでやってたんですけど。2人ともどうでした?

橋本 一生懸命書いてましたよ。

――やっぱり娯楽に徹しながらも、ドラマに1本芯みたいなものが通して書かれてありましたね。

橋本 いや、娯楽に徹してはいませんよ、別にね。まあ、娯楽に徹するっていうのは、また言い方が…。まあ、テレビも娯楽っちゃあ娯楽ですよ、全部。だけども、それに徹するとかなんとか言われちゃうと、ちょっと言葉の使い方がひどく乱暴で(笑)、わからないんだけども。要するにまあ、最初の頃のウルトラマンとかウルトラセブンとか、まあ、ああいうものがあって『帰ってきたウルトラマン』というもので再登場して、ウルトラマンの割とこう、なんていうかパターンみたいなのが、何となくでき上がってきたような感じがあったでしょう? で、それに、もう少し、歌謡曲的な要素というかね。それから、あなたのおっしゃる意味もそうだろうと思うけれども、言うところの娯楽的な要素をね、入れてやったらどうかなと。で、2人ともよく書いたんじゃないですか、それをね。

――もう阿井文瓶さんは、ここが青春だったと。もう、一番熱い時期だったと言ってるんです。モットクレロンという怪獣が出る回(『怪獣を塩漬にしろ』)があるんですけど、熊谷健さんはう〜んという感じだったんですけど、橋本さんは一発でOKを出したそうで(笑)。それが一番自分の中で気に入っている作品だっていってました。野菜を食べていく怪獣の話なんですけど。

橋本 ああ、そうですか(笑)

――で、レオに関しては、最初の6本やってますね(注/スタッフロールに橋本氏の名前が出ているのは1話から6話まで)。

橋本 最初の6本ぐらい名前出てたかもしれないけども、実質的には僕はほとんどやってないですよ。

――企画の立ち上げ立ち上げあたりまでですか?

橋本 まあ、企画の立ち上げっていうかね。あの、『こういう風にしましたよ』っていうんで、『じゃあここはこうしたらどうか』とかいうぐらいなもんで。あとはあれは誰がやったのか…。熊谷(国雄)さんがやったんだよ。じゃあ熊谷さんのやりたいようにやったらどうかって言って。で、実際にはちょっと設定暗すぎたんだよね。それで真夏(竜)君を主役にしたんだけど、彼がこう…なんていうのかな、篠ちゃんのような明るさが無かったもんだから、全体に、こうムードが暗くなった感じではありましたよね。一発目見た時ね、随分ちょっとこう暗い雰囲気になったなあという気はしましたけどね。

――それでちょっと視聴率が落ちちゃったという。

橋本 視聴率も、ちょっと良く無かったのかな。

――ひと桁になっちゃったという…。

橋本 ああ、そうですか。

――ウルトラシリーズ終了にあったって、しばらく充電期間を置くためにやめる、って新聞で宣言してるんですよ。橋本さんが。撮影現場には見にいかれましたか…。

橋本 タロウまでですよ。タロウもね、後半は行ってないですよ。確かね、タロウの後半で部長になったから。脚本は見ましたけどね。脚本は、まあせっかくあの2人がやりはじめたもんだし、他の人が見ると、他の人の頭付きで読んじゃうから混乱しちゃうんですよね、だからまあ、脚本だけはアレしましょうって。

――石堂淑朗さんも書かれてますけど。

橋本 イシ(石堂氏)も書いてたね。

――ウルトラマンA以降は、小学館の学習雑誌の編集者たちがウルトラチームというのを作って、ウルトラ兄弟の設定をつくったという…。

橋本 兄弟は僕らの方で作ったんだけどね、熊谷健君と話しをして。それとまあ、ウルトラマンタロウのなかで親父(ウルトラの父)が出てくるでしょう。母(ウルトラの母)と父。ああいうのをまあ、出してみようと。世の中がホームドラマばやりでしたからね(笑)。あんまりウルトラマン、ウルトラマンって変にしかめっつらしてやらないで、色々な要素を取り入れたらどうかなって、やったんですけど。

――親子とか、母と子のテーマが凄く多いんですよね、タロウは。

橋本 そうだね、篠ちゃんって、ちょっとホラ、お母さんっぽい感じがあるでしょう。

――そうですね、末っ子的なところもありますね。

橋本 そうそう、実際はそうじゃないんだけどね、長男なんだけど。

――そうなんですか、三郎なのに長男なんですね(笑)。

2,橋本氏、ウルトラマンAを語る(工事中、近日公開予定)

トップに戻る